趣味は映画の研究と映像収集。暇さえあれば作品鑑賞をしてますが、まだ未見の作品が棚にドッサリ・・・。香港・台湾・韓国・日本以外にも、東南アジア方面のアクション映画に関しても紹介します。
by moviefan-z


カテゴリ:   :南国風雲片( 2 )

『鰐魚大災難』

a0221045_20381151.pnga0221045_21232822.png














邦題:人喰いワニ ジャイアント・クロコダイル
中題:鰐魚大災難
原題:Chorake
英題:Crocodile
製作:泰国:Chaiyo Productions
   :韓国:韓振興業(株)会社,1977年

【物語】
 広島に落とされた原子爆弾の死の灰がタイに流れ着き、一匹のワニが原因不明の突然変異によって巨大化してしまう。巨大化したワニは陸に上がり、目の前にいる牛や鳥を丸呑みし、さらには川と海を行き来しながら、人間や動物を襲い始める・・・。

【解説】
 突然変異によって巨大化したワニが、普段と何ら変わらない日常生活を送る人々を恐怖のドン底へと突き落とす。特撮と残酷描写の凄まじさが話題を呼び、現在でも一部の映画マニアの間で絶賛され続けている動物パニック映画の大傑作だ。製作は『ウルトラ6兄弟対怪獣軍団』(74)『ハヌマーンと5人の仮面ライダー』(75)などで知られ、円谷英二に師事したソムポート・センゲンチャイが率いるタイのチャイヨー・プロダクション。最初から海外市場を視野に入れた映画として企画されており、合作国の相手は韓国の韓振興業株式会社に決まった。何故にタイと韓国が共同で製作したのかと言うと、過去にタイで初めて韓国映画を公開配給したのが、ニコム・シスラットなるタイの映画配給会社の社長で、彼が韓国映画界と関係を持っていたからだと言われている。ちなみに、未確認情報だが、香港から邵氏兄弟有限公司と嘉禾電影有限公司が製作協力として参加しているらしい。確かな事実に関しては今だ調査中だが、劇中では邵氏紅星の恬妮や、同時期に嘉禾映画に出演している韓国人女優の王恩姫が出演しているのが確認出来る。
 本編を観て気付くと思うが、本作はスティーヴン・スピルバーグ監督作『ジョーズ』(75)の亜流映画で、巨大サメを巨大ワニに置き換え、妻子を失った主人公たちの人物像や物語の展開も本家から引用している。だが、本作はただの亜流映画には終わらず、独自の要素を詰め込んでいるのが最大の魅力である。それは一体何かと言うと、本物のワニと偽物のワニを巧みに使った特撮場面だ。目を赤く光らせ、獲物目掛けて水上から大ジャンプする。水上生活者が密集する市場を襲撃した時は、長い尻尾で建物を破壊し、衝撃で川に投げ込まれた人間を大きい口で丸呑みし、犠牲者の手足が川底に溜まる。この大迫力で残酷的な特撮場面を演出するため、日本から円谷英二の直弟子の佐川和夫を招いている。本家の設定を引用した安い物語よりも、日本の代表的な特撮技師が手掛けた特撮場面だけでも十分観る価値はある。
 製作側の韓国で本作が公開されたのは78年暮れになってからで、『ワニの恐怖』の題名で、38745人の観客動員数を記録して興行的に成功を収めた。79年には当時の韓国映画史上最高額となる10万ドルを支払い、香港の嘉禾が海外配給権を取得したが、現在はこの韓国版の映像は紛失している。タイでは残酷描写が規制に掛ったのか、完成から数年遅れて80年に『Chorake』の題名で公開、アメリカではB級映画界の名プロデューサーのハーマン・コーエンとディック・ランドールの配給により81年に『Crocodile』、香港では82年に『鰐魚大災難』の題名で公開された。日本では劇場未公開に終わったが、後に『人喰いワニ ジャイアント・クロコダイル』の題名でビデオ発売された。この国内版ビデオは、北京語音声に中国語・英語・インドネシア語の焼付字幕が入った貴重な香港版の映像が使用されている。

【参考映像】
映像 :北京語音声,日本語、中英印文焼付字幕版VHS
     タイ語音声版DVD
[PR]
by moviefan-z | 2010-10-31 20:24 |    :南国風雲片

『天鰐』

a0221045_22373052.png














中題:天鰐
原題:Krapeu Lok Nen
英題:The Crocodile Men
製作:柬埔寨:Sovan Kiri production,1972年
配給:台湾:金山影業公司

【物語】
 ワニに変身する仙術を持つ趙龍は、師匠を体の上に乗せて川を渡っていた時、岩穴から泳いで来た一匹の大ワニと遭遇して激闘を繰り広げる。彼は師匠をわざと呑み込んで敵の攻撃から守り通したが、兄弟子たちは彼が師匠を食べたと勘違いをしてしまう。そして、趙龍は村から追い出されてしまい、怒りと悲しみを抑えれなくなった彼は仙術で悪の道へと走り・・・。

【解説】
 当時公開された香港または台湾映画の中には、国産映画と謳われた東南アジア映画が僅かながら混ざり込んでいた。本作に関しても、出演者や製作人も中国人名義で統一され、一部の資料では台湾映画として表記されているが、実際は『Krapeu Lok Nen』と呼ばれる、カンボジアで製作されたファンタジー映画である。一体どのような経緯で台湾映画として紹介されたのか、第25回東京国際映画祭への来日を果たし、カンボジアの伝説的存在として知られるティ・リム・クン監督のインタビューを参考にしながら調査した結果、それにはカンボジアの人々の心に深く突き刺さった、決して拭い去れない最大の悲劇が関係していた。
 カンボジア映画は60年から始まり、75年までの15年間に約400本以上の国産映画が製作され、人々は〈カンボジア映画の黄金時代〉と呼んだ。何故に75年までかと言うと、49年にフランス植民地であったカンボジアを独立させたノロドム・シハヌーク王が国家元首となって政権を握ったが、親米派のロン・ノル将軍のクーデターによって旅行休暇中のシハヌーク王が追放され、クメール共和国が樹立されると共に内戦が激化する。そして75年に共産主義勢力のクメール・ルージュの独裁者のポル・ポト政権が成立されたのだ。これにより、カンボジアの首都のプノンペンが占領され、史上最悪の大虐殺が幕を開ける。また、人々の娯楽が徹底的に禁止され、約400本以上も製作された国産映画はその殆どが焼却処分された。知識人と判断された映画人に関しては処刑されたと言われている。第25回東京国際映画祭では、来日したティ・リム・クンの監督作『天女伝説 プー・チュク・ソー』(67)『怪奇ヘビ男』(70)が奇跡的に公開された。インタビュー内では、彼はポル・ポト政権前に自身の監督作6本を国外への持ち出しに成功し、他の7本は失ったと語っている。
 本作を製作したソヴァン・キリー・プロダクションは、64年に設立されたカンボジアの映画会社で、75年までに約23本の国産映画を製作している。設立者は本作の監督と主演を務めたフーイ・カン(彼は製作と主題歌の作詞も兼任)とデイ・サヴェト夫妻で、前述したティ・リム・クンと同様に、ポル・ポト政権の勢いが増すと同時にカンボジアから香港へと亡命している。現存する本作の映像は北京語音声と中英文焼付字幕入りの中華圏公開版のみで、元のクメール語の原版は既に存在していない(原版で起用されたシン・シサモットとロ・セレイソティアが歌う主題歌、パン・ロンが歌う挿入歌の貴重な音源は残されている)。ちなみに、夫のフーイ・カンは以前から香港に金山影業公司を設立しており、現存する映像が北京語音声と中英文焼付字幕入りなのも、恐らく亡命先の香港に設立した自身の映画会社で、再び公開配給するのを目的にカンボジアから映像を持ち出して編集を施したと思われる。また、香港では既に嘉禾電影有限公司の配給によって『怪奇ヘビ男』と続編『Puos Keng Kang 2』(71)が公開済みであり、妻のデイ・サヴェトは李莎月の中国名で知られていた。本作を含む自身の監督作もきっと中華圏で公開すれば成功すると願っていたとも考えられる(ポル・ポト政権前には両地の合作映画として『愛魂』(72)『蛇魔女大鬧都市』(74)が製作されている)。
 香港に移住後、夫婦共に仲良く映画製作に人生を捧げて来たが、残念ながら同地で離婚してしまう。93年に故郷のカンボジアに帰国したデイ・サヴェトは再び女優業に復帰し、近年開催されたカンボジアの映画祭でも彼女の主演作が受賞するなど、今だに根強い人気を誇っていると聞く。一方、フーイ・カンに関しては詳しい経歴が不明で、肝心な資料は全く残されていない。本作では悲劇の主人公の趙龍を演じており、小太り体系で華のない顔立ちで主役を張るのは少し難しい気もするが、劇中では棍棒を華麗に振り回したり、自身の作詞した主題歌を熱唱したりと、その見事な演技力には驚かされた。彼は香港に移住後、自身の名前を許強あるいは金翁の中国名へと改名し、活動拠点も次第に台湾へと移す。後に董瑋主演作『人虎戀』(77)、洪金寶主演作『デブゴンの太閤記』(78)などの台湾製の功夫映画が製作されるが、実は彼の監督作である。

【参考資料】
映像 :北京語音声,中英文焼付字幕版VCD
書籍 :『映画秘宝 2013年1月号』(洋泉社)
サイト :『不思議館 ポル・ポトの大虐殺』
     (http://members.jcom.home.ne.jp/invader/map_1.html#polpot)
     『Nostalgie Films Khmers Avant 1975』
     (http://golden-age-of-khmer-cinema.eklablog.com/)
[PR]
by moviefan-z | 2010-05-14 08:58 |    :南国風雲片