趣味は映画の研究と映像収集。暇さえあれば作品鑑賞をしてますが、まだ未見の作品が棚にドッサリ・・・。香港・台湾・韓国・日本以外にも、東南アジア方面のアクション映画に関しても紹介します。
by moviefan-z


『激殺!邪道拳』

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原題:激殺!邪道拳
英題:Soul of Bruce Lee
製作:日本:香港:泰国:シネシンク株式会社,1977年
配給:日本:東映株式会社

【物語】
 幼い頃に両親を亡くした無音笛は陳坤漢師匠が開く武術道場に身を寄せて暮らしていたが、兄弟子のサムアンの裏切り行為によって師匠は殺され、無音笛もまた激闘の末に敗れてしまう。瀕死の無音笛を救ったのは山奥で暮らす少数民族の生き残りの梨花で、彼女の施した霊薬と電気治療によって無音笛の肉体は完全に復活した。今や麻薬組織の大物として君臨するサムアンに再び闘いを挑むが、組織を率いる真の黒幕の正体は意外な人物だった・・・。

【解説】
 恐らく千葉真一が初めて李小龍を意識して製作した空手功夫映画で、李小龍との共演を果たせなかった千葉の思いが何となく伝わって来る気がする。本作の原案は、千葉と当時日本のお茶の間で人気を博していた『燃えよドラゴン』(73)の楊斯が担当しており、作品自体も李小龍を意識した要素が所々に用意されている。タイを舞台に主人公の無音笛と麻薬組織との対決を描いた物語は『ドラゴン危機一発』(71)、無音笛と小金がサムアンが占領する島に乗り込む場面は 『燃えよドラゴン』 を思わせ、無音笛に協力する麻薬捜査官の小金役を李邦臣こと山下タダシ、麻薬組織の用心棒ネパール役を楊斯が演じ、李小龍が実際に行ったと噂される電気トレーニングの場面も登場する。
 本作は題名にある通り〈邪道〉と断言出来る。無音笛と麻薬組織との対決を主軸にしながら、脇では麻薬捜査官の小金と麻薬密売人の大金との兄弟愛を描いた物語が並行して進む。だが、無音笛が活躍する本筋とは全く関わりがなく、前半部分でこの物語は強引に終了してしまうのだ。この物語で登場する大金役を演じたのは、何作ものアクション映画で数多くの香港明星と共演経験のあるタイのアクション俳優のクルン・シルヴィライ。彼が多忙だったのか、場面によっては大金役を別の役者が後ろ向きのまま演じている。他にも無音笛が屈強な肉体を作り出すために電気トレーニングを行う際、その副作用で麻薬中毒になったり、幻覚症状を引き起こして、五神打の猿拳使いを本物の猿と見違えてしまったりと、肉体的にも精神的にもボロボロな主人公も珍しい。この色々な意味で邪道な脚本を書き上げたのは、『修羅雪姫』(73)『犬神家の一族』(76)などで知られる長田紀生であるから驚きだ。
 本作の邪道な内容もそうだが、豪華出演陣によって展開される、日本空手と香港功夫の異種格闘技戦は最大の見所だと思う。無音笛役の千葉真一、小金役の山下タダシ、サムアン役の鹿村泰祥、ネパール役の楊斯、梨花役の志穂美悦子、五神打役の栗原敏や春田純一、サムアンの部下役の江全など、日香武打星が南国の地を舞台に壮絶な死闘を繰り広げる。武術指導は鹿村が担当し、香港映画仕込みの迫力あるアクションはどれも見応えがある。今回が初戦となった千葉対鹿村や志穂美対鹿村、東映映画『ザ・カラテ2』(74)以来の再戦となった山下対楊斯の対決も十分満足だが、個人的には千葉対楊斯の対決も見たかった。実際に準備稿段階の脚本では、少しだけ両者の絡みが用意されていたのにも関わらず、それが実現しなかったのは非常に残念だった。
 本作は資料上では日本映画と記載されるが、実際は日本・香港・タイの合作映画になる。監督は『0課の女 赤い手錠』『ザ・カラテ』(共に74)で知られる野田幸男と、『大地雙英』(72)『赤膽好漢』(74)などの香港映画を発表して来た、タイ華僑の陳銅民が製作と脚本を兼任して担当している。また、彼の実息子で、後に香港映画界の代表的な名監督へと成長する、少年時代の陳可辛が夏休みを利用して出演している点にも注目。

【参考資料】
映像 :日本語音声版VHS
     英語音声版VHS
書籍 :『映画秘宝 2012年6月号』(洋泉社)
     『無音笛(仮題)』※準備稿

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by moviefan-z | 2010-10-26 09:59 |    :東映株式会社
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