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『天鰐』中題:天鰐 原題:Krapeu Lok Nen 英題:The Crocodile Men 製作:柬埔寨:Sovan Kiri production,1972年 配給:台湾:金山影業公司 【物語】 ワニに変身する仙術を持つ趙龍は、師匠を体の上に乗せて川を渡っていた時、岩穴から泳いで来た一匹の大ワニと遭遇して激闘を繰り広げる。彼は師匠をわざと呑み込んで敵の攻撃から守り通したが、兄弟子たちは彼が師匠を食べたと勘違いをしてしまう。そして、趙龍は村から追い出されてしまい、怒りと悲しみを抑えれなくなった彼は仙術で悪の道へと走り・・・。 【解説】 当時公開された香港または台湾映画の中には、国産映画と謳われた東南アジア映画が僅かながら混ざり込んでいた。本作に関しても、出演者や製作人も中国人名義で統一され、一部の資料では台湾映画として表記されているが、実際は『Krapeu Lok Nen』と呼ばれる、カンボジアで製作されたファンタジー映画である。一体どのような経緯で台湾映画として紹介されたのか、第25回東京国際映画祭への来日を果たし、カンボジアの伝説的存在として知られるティ・リム・クン監督のインタビューを参考にしながら調査した結果、それにはカンボジアの人々の心に深く突き刺さった、決して拭い去れない最大の悲劇が関係していた。 カンボジア映画は60年から始まり、75年までの15年間に約400本以上の国産映画が製作され、人々は〈カンボジア映画の黄金時代〉と呼んだ。何故に75年までかと言うと、49年にフランス植民地であったカンボジアを独立させたノロドム・シハヌーク王が国家元首となって政権を握ったが、親米派のロン・ノル将軍のクーデターによって旅行休暇中のシハヌーク王が追放され、クメール共和国が樹立されると共に内戦が激化する。そして75年に共産主義勢力のクメール・ルージュの独裁者のポル・ポト政権が成立されたのだ。これにより、カンボジアの首都のプノンペンが占領され、史上最悪の大虐殺が幕を開ける。また、人々の娯楽が徹底的に禁止され、約400本以上も製作された国産映画はその殆どが焼却処分された。知識人と判断された映画人に関しては処刑されたと言われている。第25回東京国際映画祭では、来日したティ・リム・クンの監督作『天女伝説 プー・チュク・ソー』(67)『怪奇ヘビ男』(70)が奇跡的に公開された。インタビュー内では、彼はポル・ポト政権前に自身の監督作6本を国外への持ち出しに成功し、他の7本は失ったと語っている。 本作を製作したソヴァン・キリー・プロダクションは、64年に設立されたカンボジアの映画会社で、75年までに約23本の国産映画を製作している。設立者は本作の監督と主演を務めたフーイ・カン(彼は製作と主題歌の作詞も兼任)とデイ・サヴェト夫妻で、前述したティ・リム・クンと同様に、ポル・ポト政権の勢いが増すと同時にカンボジアから香港へと亡命している。現存する本作の映像は北京語音声と中英文焼付字幕入りの中華圏公開版のみで、元のクメール語の原版は既に存在していない(原版で起用されたシン・シサモットとロ・セレイソティアが歌う主題歌、パン・ロンが歌う挿入歌の貴重な音源は残されている)。ちなみに、夫のフーイ・カンは以前から香港に金山影業公司を設立しており、現存する映像が北京語音声と中英文焼付字幕入りなのも、恐らく亡命先の香港に設立した自身の映画会社で、再び公開配給するのを目的にカンボジアから映像を持ち出して編集を施したと思われる。また、香港では既に嘉禾電影有限公司の配給によって『怪奇ヘビ男』と続編『Puos Keng Kang 2』(71)が公開済みであり、妻のデイ・サヴェトは李莎月の中国名で知られていた。本作を含む自身の監督作もきっと中華圏で公開すれば成功すると願っていたとも考えられる(ポル・ポト政権前には両地の合作映画として『愛魂』(72)『蛇魔女大鬧都市』(74)が製作されている)。 香港に移住後、夫婦共に仲良く映画製作に人生を捧げて来たが、残念ながら同地で離婚してしまう。93年に故郷のカンボジアに帰国したデイ・サヴェトは再び女優業に復帰し、近年開催されたカンボジアの映画祭でも彼女の主演作が受賞するなど、今だに根強い人気を誇っていると聞く。一方、フーイ・カンに関しては詳しい経歴が不明で、肝心な資料は全く残されていない。本作では悲劇の主人公の趙龍を演じており、小太り体系で華のない顔立ちで主役を張るのは少し難しい気もするが、劇中では棍棒を華麗に振り回したり、自身の作詞した主題歌を熱唱したりと、その見事な演技力には驚かされた。彼は香港に移住後、自身の名前を許強あるいは金翁の中国名へと改名し、活動拠点も次第に台湾へと移す。後に董瑋主演作『人虎戀』(77)、洪金寶主演作『デブゴンの太閤記』(78)などの台湾製の功夫映画が製作されるが、実は彼の監督作である。 【参考資料】 映像 :北京語音声,中英文焼付字幕版VCD 書籍 :『映画秘宝 2013年1月号』(洋泉社) サイト :『不思議館 ポル・ポトの大虐殺』 (http://members.jcom.home.ne.jp/invader/map_1.html#polpot) 『Nostalgie Films Khmers Avant 1975』 (http://golden-age-of-khmer-cinema.eklablog.com/)
by moviefan-z
| 2010-05-14 08:58
| :南国風雲片
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