趣味は映画の研究と映像収集。暇さえあれば作品鑑賞をしてますが、まだ未見の作品が棚にドッサリ・・・。香港・台湾・韓国・日本以外にも、東南アジア方面のアクション映画に関しても紹介します。
by moviefan-z


『大酔侠』

a0221045_14243844.png














邦題:大酔侠
原題:大醉侠
英題:Come Drink With Me
製作:香港:邵氏兄弟有限公司,1966年

【物語】
 両江総督の息子、張歩青を人質として捕らえ、投獄された首領の釈放を迫る山賊団の玉面虎らの要求を無視した総督は、張歩青の妹で金燕子と呼ばれる女剣士、張熙燕を敵地に送り込む。何度も襲い来る山賊団の攻撃によって窮地に陥られた張熙燕を救ったのは、醉侠と呼ばれる乞食の容姿をした剣客、范大悲であった・・・。

【解説】
 国際的に評価の高い巨匠として知られる胡金銓監督の最初期の傑作であり、初めて手掛けた武侠映画。人を斬る際に血飛沫が噴き出すなどの残酷描写、手に汗握る一対数十人の真剣勝負など、これまでの武侠映画では重要視されなかった、西洋の西部劇や日本の時代劇などの雰囲気を付け加え、さらに胡金銓による映画の剣戟アクションと伝統的な京劇スタイルを融合させた〈京劇の映画的アダプテーション〉と呼ばれる斬新な演出方法が取り入れられ、これが成功を収める。以後は香港と台湾において〈新派武侠片〉と呼ばれる新たな武侠映画ブームを巻き起こし、近代武侠映画の基礎を築いた。
 物語は金燕子こと張熙燕と山賊団の闘いを描いているのだが、題名にある通り、実際は張熙燕を影で支える乞食の容姿をした剣士、酔侠こと范大悲が主人公である。張熙燕と比べると出番が非常に少ないのだが、終盤では張熙燕に代わって山賊団と手を組んだ兄弟子の了空大師と壮絶な気功合戦を繰り広げるという中々の活躍ぶりを披露する。個人的には范大悲よりも張熙燕の方が印象が強く、正直に言えばこのまま最後まで張熙燕を主人公として活躍して欲しかったが、さすがに題名にもなっている范大悲を脇役のままで終わらせるのは不味かったのだろうか。
 主人公の張熙燕は女性ながらも凛とした姿が魅力的で、美しくも驚異的な二刀術で山賊団を斬り倒して行く。張熙燕役を演じたのは、当時まだ新人女優として邵氏から売り出されていた鄭佩佩。日本映画好きな胡金銓の演出のお陰か、彼女の戦闘姿や間の取り方はやはり日本の時代劇を思わせる。本作の成功から、邵氏製作の武侠映画に立て続けに主演した彼女は〈武侠影后〉の称号を得て、70年に結婚引退を機に渡米した。また、本作へのオマージュを捧げた李安監督作『グリーン・デスティニー』(00)にも出演しており、劇中では冷酷な女剣士、碧眼狐狸を演じて第20回香港電影金像奨最優秀助演女優賞を受賞している。
 他にも本作では、范大悲役で岳華 、了空大師役で楊志卿、玉面虎役で陳鴻烈、玉面虎の手下役で李允中、韓英傑、谷峰、袁小田、馮毅、趙雄、王若平、乞食の子供役で火星、徐忠信、寺の小坊主役で程小東、張熙燕が率いる女兵士役で潘迎紫が出演している他、撮影監督に賀蘭山こと西本正、武術指導も兼任している韓英傑の助手として無名時代の洪金寶が参加している。

【参考資料】
映像 :北京語音声,中英文焼付字幕版VHS
     北京語音声,日本語字幕版DVD
書籍 :『大酔侠』封入解説書 ※国内版DVD
     『キン・フー武侠電影作法』(山田宏一氏、宇田川幸洋氏,草思社)
     『カンフー映画大全集』(近代映画社)
     『邵氏光影系列 武侠・功夫片』(三聯書店)

a0221045_8373432.png
[PR]
by moviefan-z | 2009-11-15 21:03 | 公司:邵氏兄弟公司
<< 『龍門客棧』